2021年9月18日

北アルプストレイルプログラム(仮)が始まります

本日9/18より1ヶ月間、北アルプストレイルプログラム(仮)と題する実証実験が始まります。 


登山道の維持にはお金が必要。それは当然のことだけれど、今まであまり知られていなかった部分も含めて、登山者に知ってもらい、任意の寄付を募ろうと言うプログラムです。

プログラムの内容・目的について、HPより抜粋

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「登山道は誰が、どうやって整備しているんだろう。」と考えたことはありますか?これまで、北アルプス南部地域では、行政機関、民間の山小屋の相互協力により、登山道の維持を行ってきました。しかし、新型コロナウイルス感染症流行などの状況変化により、これまでと同様の維持が一層難しくなってきています。

そこで、利用者の皆様に登山道維持の現状を正しくお伝えしたうえで、皆様にご参加いただくことにより登山道を維持していく新たな制度を検討しています。まずは任意の寄付金を募る実証実験(=北アルプストレイルプログラム(仮))を実施することとなりました。

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登山道の維持には当然のことながら多額の費用がかかりますが、不足分は下記資料の通り、山小屋からの持ち出しとなっているそうです(私はこういう費用の内訳の資料を初めてみたので、こんなに、、と驚きました)



(北アルプス登山道維持連絡協議会のHPより)


ホームページ(再掲)では、アンケートもあるので、ぜひ登山者としての意見を書いてみてはいかがでしょう。
https://nationalpark-japanesealpstrail.jp/outline/

山研委員
わだこ記

2021年8月18日

穂高を翔ぶ 

 お久しぶりのブログとなりました。

みなさま、お変わりありませんか。

最近の私はと言うと、連日の国際情勢や国内政治や、その他ニュースや、SNSから入ってくる情報に心がざわざわして、疲れているのを実感しています。それなら見なければいいじゃんという考え方もあるのだろうけれど、今の私にとってはそれは思考停止なので自分が何に対してどう感じて考えるのかは諦めたくないな、と思ってもいる・・・。

さてさてそんな中、大好きすぎる元管理人・現委員のSさんからDVDをいただきました。うれしい!


ハチプロダクション「穂高を翔ぶ」 


そう、穂高小屋の宮田八郎さんの作品です。

穂高の上をヘリで撮影した映像(DVDの出版は2004年です)なのですが、サブタイトルがAngel Tripとあるように、まさに「穂高を翔ぶ」といういにふさわしい。

私はストレッチポールの上に寝転がって手足をパタパタさせながらみたら、ほんとに穂高の上をふわふわ飛んでいる気分になれました。

かかっている音楽もすごいよくて(女性ヴォーカルの曲、タイトルを調べてダウンロードしたい・・)、ナレーションの声も、随想で使われている串田孫一さんのことばも最高でちょっと涙でた・・・


最高すぎるのと、私の語彙力があれなので、このブログを読んでくださっているあなたに少しでも伝えたくて、引用。

「こういう時に、何も考えずにただ美しさに見蕩れいてもいい」

(串田孫一著「もう登らない山」より)


穂高って、山って、美しいなって純粋に思った2021年の夏。

来シーズンには山研に置いておこうと思いますので、山研をぜひ訪ねた際にはご覧ください。


山研委員わだこ記


2021年7月5日

山研 危険木択伐プロジェクト その1

現在の山研が建ってから早28年あまり。

今の建物は第3代で、初代は1961年建設なので、当然ながら、建物周りの木もどんどん成長しています。

さて、昨年山研の今後の修繕・維持課題を委員会で検討した際にあがったのが、この、建物周りの木たちでした。

既に建物にも枝がかかり始めて、猿が木に登って山研にいたずらしたり、 と影響が心配されていました。何本かは日照の関係で建物に向かって生えてもいるし。

しかしまぁ、いかんせん、建物に近い木だし、山研がある場所は関連する法令(国立公園、保安林等)もたくさんある・・・切るのは難しそうだなぁ、と心配していたところ、日本山岳会の中でつてをたどり、適任者とご縁があり、必要な行政手続き(これも異様に大変だった・・・)を経て無事に木を切ることができました。

そこで今日は、木の根伐を担ってくださった、「猿投の森づくりの会」代表の和田豊司さんの報告書を掲載許可をいただいたのでご紹介します。

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JAC上高地山岳研究所(以下山研という)支障木除伐上高地梓川にかかる河童橋横にある山研は1961年に林野庁から土地を借り受け研究施設として活用されている。

善六沢の扇状地の裾に位置し、笹の生い茂る湿地にハルニレ、サワラ、イチイ、カツラ、ダケカンバ、ヤチダモなどが生育している。猿投の森の植生とは全く異なる。今の建屋は3代目で1993年に建てられ、当初は見通しのきく六百山や岳沢が見通せる敷地であったようだ。次第に木々も成長し枯れ枝の屋根への落枝、落ち葉、猿による糞害などが目立ち始め、建屋に影響を与えるようになった。業者による除去が検討されたが古野会長からせっかくJACとして森づくり活動をしているのなら自分たちの手で支障木の除去作業をしてはとの提案で山研委員会が中心になって今回の作業が企画された。国立公園内の厳しい規制のある条件下 、除去に関わる許認可や手続きは山研委員会が行った。当初20本ほどの支障木の除去や水力発電設備であるパイプライン上の枯死木除去も申請したが建屋廻りの11本の除伐と2本の枝打ちのみが認可された支障木の除去は八ヶ岳ツリーワークス(特殊伐採業者、経営者は東海支部員で元ローツェ南壁隊員)がハルニレやイチイの枝打ちと2本の除伐。9本のカツラ、サワラなどを猿投の森づくりの会が担当した。 




                 




除伐前(左)   除伐後(右)

通常であれば伐倒に邪魔な小さな木や草を除去した上、安全な足元を確保して行う作業だが枯れ枝1本除去するにも気を遣う国立公園内であるため作業しにくい。
笹が生い茂る湿地での作業は足元が不安定である。枝打ちした直径90㎜ほどのイチイの枝の年輪を数えたら103年であった。明治初期上高地の用材としての伐採が禁止されて以降の年数とほぼ一致する。巨木とまではいかないが100年を越える木々を除伐するには少し気が引ける。建屋や立木に当たらないよう伐倒方向を定め、さらにロープで牽引し安全を確認してゆっくり倒す技術は猿投の森でいつも経験している。



サワラの伐倒

むしろ枝打ちは経験がなく、八ヶ岳ツリーワークスの仕事である。スローラインという道糸で最上部に細い糸を通し、その糸を使って安全確保用のロープを通し支点を作る。人はロープに身を委ね作業する。切った枝は別の支点を作り切った枝を吊るし、ゆっくり地上に下ろす。20m程上空の軽業師である。猿投の森づくりの会でもM氏はこの作業が可能である。





八ヶ岳ツリーワークスの空中作業



除伐に参加した皆様

任された9本の木は順次伐倒し、ハンドリングできるサイズに切り(玉切りという)整理していく。枝も細かく切り、きれいに揃えその場で腐らせる。持ち出したり薪に活用することはできない。
28人日の作業計画で企画したが好天と卓越した技術、会員の素晴らしいチームワーク、八ヶ岳ツリーワークスの支援により12人・日で作業を終えた。


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以上、「猿投の森づくりの会」の報告でした。
私も以前、猿投の森にうかがったことがあるんですけど、まさに森のプロ・・・
皆さんお疲れ様でした!ありがとうございました!


山研委員 わだこ記

2021年5月15日

2021年開所報告


日本山岳会上高地山岳研究所は5月3日に開所し、会員の皆様の利用を開始いたしました。

最近の感染症拡大の状況を鑑みると、ぜひお越しください、と言いづらい状況ではありますが・・・建物保全の観点からも無事に小屋に空気を通すことができてほっとしました。

今年もう一つうれしかったことは、水力発電を再開できたことです。

私たち山研は、水力発電をメインとした「研究所」です。

ただ昨年は開所時期が全国的に緊急事態宣言中にあたり、発電チームが来れなかったという事情もあり、また、地震も豪雨もあったため、発電を止めている状態でした。

水力発電は、自然を相手にした営みであり、定期的なメンテナンスが必要です。

過去のブログ:水力発電復旧大作戦(2019年10月)


というわけで、今回の開所は、必要最低人数で通常の開所、と水力発電作業、それから感染症対策のカーテン設置と、盛り沢山の内容となりました。

いつもなら2日がかり・10数名で取り組みますが、今回は半分強の人数で効率よくチームワークで進めました。
雪囲いはずしは、なんと2時間掛からず完了!

無我夢中すぎたのですが、写真を唯一撮った水力発電の様子をお伝えします。

1年半前の閉所ぶりにまずはホースを引っ張り出します。

取水口のホースをまずは揃えて・・・

沢沿いに固定します。



ホースの先端から取水します。ベストな水量を確保できるよう、ホースの口を調節します。
沢の地形を見定めて自然に固定できるような位置を見つけるのはなかなかに難しい・・・






雨が降りだして寒かったです・・・(翌日曜日は雪でした)。
沢から引いた水をタンクに一度貯めます。



がんばったおかげで十分水が取れる状態になりました。


ホースは、山研隣の水力発電小屋まで続きます。この小屋の中で発電しています。


はい、無事に電気がつきました〜


今後の目標として、山研の電気をすべてこの水力で賄うなど、より環境に配慮した山研をめざしていこう、と委員の間で話し合いが行われました。今後の活動の強いモチベーションとなりました。



山研委員 わだこ記







2021年4月24日

おうちで上高地開山祭(4月27日(火) 8:45-)

ただいま山研は開所第一弾で今週末は水回り作業中です。

緊急事態宣言が(またも)発出され鬱々とした気持ちになりますが、出来る限りの感染症予防対策をとりながら、5月3日の利用開始に向けて粛々と準備を進めております。


さて!上高地の開山祭のお知らせです。

開山祭は神事であり、毎年4月27日に行われます。(昨今のコロナ関係なく)一度行ってみたかったけれど、平日で仕事だし・・という思いをされた方もいたのでは。

そんな方に朗報です!今年はYoutubeのライブ配信があるそうなのです。

4月27日(火) 朝8:45- とのことです。

上高地公式ウェブサイトの案内はこちら

お時間がある方は、上高地が長い眠りから目覚め、春を迎える瞬間を一緒に見守りましょう。

https://youtu.be/y6G8EiDyWHs




山研委員 わだこ記

2021年4月13日

2021年ご利用のお知らせ 

山岳研究所運営委員会は、5月3日より皆様のご利用の受付を開始いたします。


昨年度に続き、新型コロナウイルス感染防止のための対策を十分に講じてまいります。利用者の皆様には寝袋を持参いただくなど負担をおかけしますが、ご了承ください。


定員: 最大15名まで

*完全予約制・先着順

予約方法:お電話・FAXまたはメール

電話/FAX:0263-95-2533 または、sanken ★ po.mcci.or.jp (星を@へ変更ください) へご連絡ください。(担当:山研管理人 山田和人)


*滞在中は、飲食・就寝時を除き、マスクの着用をお願いいたします。

*利用時は寝袋をご持参ください。(敷布団・枕はご提供します)

*その他、現地では管理人の指示に従って安全な行動へのご協力をお願いいたします。

*ご利用にあたりましては、本ブログの「予約状況・予約方法」のページもご覧ください。


皆様のご来所をお待ち申し上げております。


2021年3月9日

上高地に春の訪れ

平山中の山研にいってきました。


来期に予定しているプロジェクト準備のため、平日有給を使っての山研入りです。


今回も慌ただしくて河童橋にはいけなかったけれど(なんてもったいない・・)、途中で素晴らしい景色を拝めました。

まるで春のようなお天気で、雪が溶け始めていました。

私にとって、上高地は世界で最も美しい場所の一つです。

たとえ雨が降っていても、どの季節にいっても、そして何度訪れても、毎回なんて美しいんだろう、と思わず足をとめてしまうことがしばしばあります。



今回山研に入ったのも、実は来期に建物保全のため行政関連の手続きが必要でいろいろやることがあるからなのですが(関係省庁はなんと4つ)。

行政手続きに不慣れな私には難しいことも多いですが、行政庁の皆さんは優しく教えてくださって本当に感激しています(おべっかに聞こえるかもしれませんが、本心からそう思っています)

この尊い、そして日々移りゆく上高地の自然を守るために、多くの関係者の方のたゆまぬ努力が背景にあるんだ、ということに改めて感じることができました。

山研委員の仕事は大変なことも多々ありますが、上高地を歩くだけでは知り得なかった一面も垣間見ることができて、上高地の一員になれたような気分を味わえる瞬間も増えました。

山研委員会では現在、来年の利用ルールについても検討と議論を重ねています。感染症予防という今までになかった対応を求められた昨年でしたが、日々変わる状況にどうやって対応し、そして会員の皆さんに安全かつ楽しく山研を利用してもらえるのか。委員の皆さんが知恵をしぼっています。

皆様の応援を、どうぞよろしくお願い申し上げます。


山研委員 わだこ記

2021年1月17日

海外ニュース:ネパール隊が冬期K2登頂に成功

*山研と関係ない海外ニュースです。

ネパールチームの10名が、1月16日(土)にK2に登頂したというニュースが入ってきました。


メンバーのうち9名はシェルパ。
そしてなんと、そのうちの一人Nirmal Purjaは、無酸素での登頂となりました。



すご・・・
これまで、K2の冬期登頂を多くの隊が狙っていました。
(2017年12月に私は蝶ヶ岳講習から戻ってきた夜、ポーランド隊が撤退というニュースを聞いたのを思い出します。)

今回の登頂はまさに歴史に残る快挙でしょう👏👏👏👏

この登攀はメンバーが逐次SNSでアップデートしていたので、世界中が経過をみまもっていました。
私のインスタフィードは今、このニュースとおめでとうの言葉であふれています。
成功をみんなが喜び合う山の世界の文化が私は本当に本当に好き。


一方で悲しいニュースも入ってきました。
無酸素ですべての8000m峰登頂を目指していたスペインのクライマーSergi MingoteがC1から下山中に滑落して亡くなりました。
これまでにエベレストに4000名登頂していますが、K2は367名しか登頂していない(2018年6月時点)という事実を踏まえると、これだけのクライマーが命を落とす難しい山ということがよくわかります。Sergiはロックダウン中のスペインでも万全のトレーニングを積んでいて、とてもいいコンディションで臨んでいたということです。

ネパール隊は、現在C3まで下山中(1月17日日本時間深夜時点)。無事にベースキャンプに下山するまで引き続き見守りたいです。
(追記:その後全員ベースキャンプに下山したとのこと)

世界中が大変な中、前に・上に進んでいる人たちがいる。そんなニュースに私も元気づけられ、私もがんばるぞ!と思える嬉しい嬉しいニュースでした。

山研委員 わだこ記