2019年11月15日

上高地閉山式と氷の羽根、ご挨拶

上高地閉山式の朝を迎えました。
冷えていますが穏やかな日です。

















上高地でのこうした神事にはこれまでに何度も立ち合わせていただきましたが、
地元の方々の、山の神々に対する真摯な姿勢そのものに、
私はいつも畏敬の念をおぼえてきました。
その姿は、宿命的にこの地を先祖から受け継ぐ人々の、
ゆるぎない覚悟と誇りの現れなのかもしれません。
そうして守られてきた上高地で、
20年もの月日を自由に過ごさせていただいたことを感謝しています。


私は上高地の自然から、
数え切れないほどの驚きや歓びを与えられましたが、
この氷の羽根もそのうちのひとつでした。
放射冷却で冷え込んだ初冬の上高地で稀に見られる神秘的な現象です。
今日はちょうどその条件が揃っていました。
シソ科の植物(上高地ではコウシンヤマハッカ)の枯れた茎の根元に付着する薄氷。
高さは地面から数センチ。他の植物には付きません。
この植物だけは、枯れてもなお僅かに水分を吸い上げ続けているということでしょう。
その水分が凍って羽衣のような繊細な造形美を作り出します。





山研管理人としては5年間お世話になりました。
不慣れな仕事にアタフタするばかりで行き届かない点も多かったと思いますが
あたたかく見守ってくださった会員さんと委員会のみなさんには
心からお礼を申し上げます。

本当にありがとうございました。  
またどこかでお会いできますように! 

元川里美




2019年10月23日

穂高 冠雪しました

一昨日の夜から降り続いていた雨は、
稜線では雪になっていました。
穂高、初冠雪です。






昨日は雨が止んでもなかなか稜線が出ませんでしたが
今朝はようやくすっきりと晴れました。
6時の気温は3℃ほど。
それでもやはり今年の秋は暖かいなという印象です。

上高地はこれからカラマツの黄葉が見ごろになります。
沢渡あたりの梓川渓谷の紅葉も綺麗に色づき始めています。


山研は今週末に閉所作業を行います。

元川


2019年10月5日

水力発電復旧大作戦

われらが「山研」は、山岳研究所の略です。
日本山岳会の会員の皆様の利用以外にも、善六沢を水源とした水力発電や気象データの収集などの研究に取り組んでいます。

水力発電は、流れる水の高低差を利用して発電をするわけですが、実際に山研で何が行われているかというと・・・


山研の裏にあるミニ水力発電実験棟に、



善六沢から水を引いてきて、ペルトン水車に流すと・・・
(水車がぐるんぐるんと動いています)


モニターに発電量が表示されました!
1kwの発電量があることがわかります。


で、山研に戻ると、お、電気がついた〜!




と、超ざっくりいうと、こんな感じです。
仕組みはいたってシンプルなのですね。


しかし・・・
今年は大雨や台風のせいで善六沢の水量が増して土砂が流れ込み、パイプが詰まってしまいました。
で、最終的には水が来なくなってしまい・・・

これは大変だ、ということで9月のとある日に、復旧大作戦が決行されたのです!!

というわけで、その様子をレポートします。

善六沢の取水口へ、いざ出発!
(*以下、頭の中に中島みゆき「地上の星」(プロジェクトX主題歌)を流してご覧ください。風のなかのす〜ばる〜)


先頭を行くのはミニ水力発電委員長のSさん。
(砂の中の銀河〜)

どんどん進みます。

Sさんが持っているのは、新しくつけるパイプ。(みんな何処へ行った〜以下略。)

で、20分くらい登ると取水口につきます。


ドラム缶に水が来ていないことを確認。やはり、パイプが詰まっているようです。

なので、沢の上部に上がり、パイプの状況を確認してみます。


沢に入って、合計6本のパイプを1本ずつ覗いてみる、と。



写真だとなんてことないように見えるかもしれませんけど・・水が冷たくて過酷な作業なんです・・。


土砂がパイプに入らないようにするにはどうしたらいいんだろう?ということで、取水の位置を微調整しました。この写真はパイプを引き上げているところ。


このように、土砂が溜まりづらい位置にパイプの先を移動して固定しました。



冷たい水とパイプ(というか、ホースw)と格闘すること数時間・・・

わーい、水が通りました!!
というか、ぎゃーーー、勢い良すぎてドラムから溢れまくっています😂


最終的にはこのように落ち着きました。




以上、復旧作業をお届けしました。

水力発電は、先輩方の専門技術と苦心によって成り立っていることが身にしみてわかりました・・
大変ではありますが、みんなで知恵を出し合いながら安定した水力発電を目指す一連の作業は、刻々と変わる自然(善六沢)に向き合い、その恵みをいただくという行為そのものなんだなぁと感じられました。

山研の水力発電の研究は、山小屋でも参考にされているということです。


山研委員わだこ記


2019年10月4日

明神岳主稜に行ってきました

前穂高岳から紅葉の涸沢を覗いてみようと思い、明神岳から登ってきました。

5峰の頭から明神岳主稜

気温がなかなか下がらないので、期待していなかったのですが。。。
今年もとってもキレイです!!涸沢!さすがです!
前穂高岳からは黄金平の紅葉も見えることに感動。
ガスガスで粘って撮った写真ですが、霞みぎみで、この感動が伝わるでしょうか。。。
奥又白方面も良さげ。
今週末をお見逃しなく!

そして来週8日は明神池のお船祭りです。落雁ではないところが松本らしい。

最後に、
管理人の元川さんが今期限りで退職されます。元川さんが作るさんけんの空間は心地良すぎて、「山、行かなくてもいいか。」と思ってしまうほどでした。
とても残念ですが、今後のご活躍とご夫妻のお幸せをお祈りしています。そして、またいつか、上高地に戻ってきてくれることを強く願っています。

さんけんの最終宿泊受入れは10月23日までです。
雨が降っても、来てみてください。楽しいこと、心が動くこと、いっぱいあります!!


見習い山研委員 山下

注意:このルートは一般登山道ではありません。経験、知識のない方は立ち入らないように注意願います。

2019年10月2日

今日の上高地

ほんのり色づきはじめた上高地です。
曇りですが台風の影響は少なそうです。
お山の紅葉はいよいよ本格的にはじまったようです。


見習い山研委員 山下

2019年9月6日

オススメお土産☆すっごいパン

小松パンの「牛乳パン」です。


以前、前管理人の内野さんご夫妻からさんけんからの帰り際に「バスの中で食べて~。すごいから!!」と頂いたのがこのパンとの出会いでした。「すごいって??」と尋ねる私に「とにかく食べてみて!」とそれ以上のことは教えてくれませんでした。
一口食べてみると「すっごい!!」しか感想がありませんでした。
それ以来、この私の中の通称「すっごいパン」の大ファンです。
一度食べてみてください!!
ベーカリーは松本市街地のお城の近くにあります。
白樺荘さんの売店にも置いてあります。毎日ではないようなので、見つけたら買いです。
皆さんの感想も教えて下さいね。でも、「すごい!」なのは知っていますよ。


見習い山研委員 山下

2019年8月13日

岳沢湿原 今日の花

山研の寒暖計で14時現在27℃の上高地です。
11日の「山の日」イベントin上高地から連日たくさんの観光客で賑わっています。
山研も夏休みらしく学生さんやご家族連れが増えています。

油断しているとこのまま夏が終わってしまいそうなので
今日はちょっと山研を抜け出してご近所の岳沢湿原まで行ってきました。










夏の花が湿原を彩っています。
トモエソウ 花びらの形が巴です。



ノアザミ 



アカバナ



この花が咲くと秋も近い? 
ノコンギク



地味ながらけっこうたくさん咲いてます。
ノブキ



オオカメノキの実が赤くなり始めました。





すれ違う何人もの人々がここの風景を目にしては
「あ、キレイ!」と声をあげていました。
大正池や河童橋とはまた違った神秘的な魅力がこの湿原にはあります。

台風が去ったら、そろそろ秋風も吹き始めるかもしれません。

元川

2019年7月27日

今朝の上高地〜梅雨明け間近♪〜

今朝の上高地は快晴です。
これから台風6号の接近にともなって天気は下り坂の予報ですが、
この風景に歓声をあげながらたくさんの登山者が歩いて行きます。









虫たちは陽光を浴びながら翅を乾かしています。






この台風が去ったら月曜日からは晴れ予報が続いています。
ようやく梅雨明けのようです♪
元川


2019年6月17日

新緑の上高地 写真撮影の滞在

先月末、山研をご利用いただきました神奈川県の奥田さんより素敵なお写真を送っていただきました。
ご夫婦でゆっくりと2泊。上高地での写真撮影を楽しまれていらっしゃいました。
いつも適当シャッターの見習い山研委員は天気が良くて、何でもキレイに写る!と大喜びでしたが、一般的な写真しか撮れないと嘆かれていらっしゃいました。写真って奥が深いんですね。それでもこんなに素敵!!動いている感じしませんか?
また、日々変わる上高地の風景を撮りにきてください。ありがとうございました。




















見習い山研委員 山下

2019年6月11日

「槍ヶ岳とともに  穂苅家三代と山荘物語」

最近読んだ本をご紹介します。

「槍ヶ岳とともに  穂苅家三代と山荘物語」
昨年のウエストン祭で講演をしてくださった菊地俊朗氏の著作です。
今年の夏は槍ヶ岳に行こう!


槍ヶ岳山荘を作った穂苅三寿雄氏、二代・貞雄氏、三代目・康治氏を通して槍ヶ岳や北アルプスの小屋や登山事情を描いています。

三寿雄氏は1917(大正6)年に、北アルプス南部で初めての営業小屋である槍沢小屋を作りました。そして1926年には槍ヶ岳肩ノ小屋を建設しました。

信濃毎日新聞の統計によれば、1919(大正6)年の槍ヶ岳の登山者は年間で425人。
しかし、その2年後の殺生小屋の開業で槍ヶ岳登山者は急増、そして肩ノ小屋の登場でさらに増えることになります。

時代はめぐり、戦後、学生や若者を中心とした厳しい登山を目指す時代を経て、中高年層を中心とした現在に続く登山ブームを迎えます。いつの時代も、山小屋の存在が登山を支えていることがよくわかります。

そして山小屋の運営も、荷揚げが歩荷からヘリコプターの活用へ、トイレや食事も時代とともに変遷していきました。

小屋の登場で、槍ヶ岳を目指すルートも様変わりしました。
中房温泉から東鎌尾根、小林喜作が作った喜作新道を経るルートがメジャーだったものの、今では全体の1割程度と推定されます。上高地から槍沢ルートが一番多いのではないかと思いますが、その結果それまであまり見向きされなかった槍沢小屋(現在の槍沢ロッジ)が重要な役割を果たすようになりました。

穂苅家三代の歴史は大正、昭和、平成の日本の登山史の縮図でもあります。

本書では他にも、
・山小屋の舞台裏のこと(小屋での仕事だけではなく、荷揚げ(昔は歩荷、1970年台頃からヘリ)から、食材の発注や経理まで、果てしない仕事量です)
・槍の穂先の歴史(現在の祠は何代目?)
・槍に鎖をかけてくれたのは誰?!

などなど、槍ヶ岳にまつわる情報が盛りだくさんです。

また、三寿雄氏、貞雄氏、康治氏の人となりや、小屋を支えてきた人たちにも触れています。
まるでファミリーヒストリーや情熱大陸を見ているかのような、熱い人間ドラマです。

槍ヶ岳に登ったことがある人にはもちろん、これから行く予定の方にもオススメの本です。
槍ヶ岳を100倍楽しめるのではないかとわたくしは思います!


山研委員・わだこ記

2019年6月6日

徳本峠を越えずして上高地を語るなかれ

さる61日、快晴の空の下、今年も徳本峠越え・ウエストン祭が開催されました。
参加者の皆様・山研委員スタッフ合計25名で、徳本峠を歩いてきました。

5時半に新島々にある安曇支所に集合後、受付やら体操の後、集合写真撮影をしてから出発です。

本日10時間行動の予定

朝イチはまだみんな元気いっぱい笑顔いっぱい

沢沿いの気持ちがいい道を歩き、お花に目を細めながら、ひたすら歩きます。
ヤマシャクヤクだぁ!

それから沢を離れてしばらく行くと、本日の最大の難所(?)と言われる、二十四曲の始まりです。一気に峠のてっぺんまで登ります。地味に辛いので、自然とみんなの口数も少なくなります笑。ここを越えれば峠小屋の豚汁が待っている~!

途中のちから水に元気をもらいます。
ちべたくて美味しい〜お水



ついたー!




さてさて、峠からやれやれ・・と下りてくると、明神にたどり着きます。明神館が見えると、ホッとします・・。ウォルター・ウエストンや小島烏水などの岳人たちと同じように感じてたのかしらん?(または峠越えなんてちょろかったか😂)

今でこそ上高地の中心地としては河童橋周辺が賑わっていますが、峠を歩いて越えてくると、明神が上高地の本当の中心というか玄関であることを体感できます。

翌日は、例年通りウエストン碑の前でウエストン祭と信濃支部主催の午餐会が催されました。

(実は私はちょうどその時間に焼岳に登っていてウエストン祭には参加できなかったのですが、レポートブログを発見
五千尺ホテルのブログ
ルミエスタホテルのブログ  

今年もみんなで元気に上高地に集まれたことに感謝感謝です。
会場の温泉ホテルの前に、全員集合


最後になりましたが、毎年のウエストン祭は、日本山岳会信濃支部の皆様のおかげで成り立っています。
徳本峠越えはウエストンの時代、日本で登山が始まった頃に思いを馳せながら、今年も和気藹々と峠を歩いたことに感謝をして、今回のブログを終えたいと思います。ご一緒くださった皆様、ありがとうございました&お疲れ様でした!


山研委員 わだこ記